腎移植を受けると、日常生活はどう変わりますか
水分制限はどうなりますか?
透析患者さんの大半は水と闘いながらの生活ですが、移植後がうまくいけば水分制限はありません。
通院はどうなりますか?
移植後安定すれば、月1回の通院で済みます。免疫抑制剤の投与量が多い時期は合併症の頻度も高いため1~2週に1度通院することが必要です。
食事療法は必要ですか?
透析中の方は、厳密な食事制限が必要ですが、移植を受けると食事制限は少なくなります。しかしながら長期生存や長期の移植腎生着を考えて、腎臓に負担のかからない食事や高血圧、高脂血症、糖尿病の予防を考えた食事療法は必要です。移植患者さんもメタボリックシンドロームを予防しなければなりません。
かゆみや足のムズムズ(レストレスレッグス)症候群はどうなりますか?
大きな悩みであるかゆみや足のムズムズ症候群は移植後、大半がすぐに解消し、皮膚の黒ずみ、透析アミロイドーシスによる手のしびれや関節の痛みも大抵2、3ヶ月で改善します。
貧血は改善しますか?
ヘモグロビン値は自然に上昇し、多くの場合エリスロポエチンなどの赤血球造血刺激因子の注射はいらなくなります。
食事はおいしくなりますか?
口の渇きや味覚異常が改善し、食事がおいしくなります。
便秘はなおりますか?
常に水分制限を課せられている透析患者さんにとって、便秘は避けられない合併症ですが、移植後は水分やカリウムの制限が無くなり、繊維成分を多く含む野菜やくだものを食べられるようになるので、便秘も改善します。
性生活はどうなりますか?
移植後多くの患者さんは性欲も性機能も復活し、大部分の患者さんが満足した性生活を送っています。
妊娠や出産は可能ですか?
透析を受けていると多くの女性患者さんは、生理がなくなり、妊娠しにくくなります。移植後は女性ホルモン分泌や排卵が回復し、望みどおり子供を産むことができるようになります。移植1年後に腎機能が安定していれば妊娠は可能です。妊娠を計画した時点から内服薬の変更、調整が必要になることがあります。
旅行はできますか?
透析受入施設をさがす必要がなくなるため、海外旅行など長期の旅行も容易になります。
仕事はできるようになりますか、収入はふえますか?
移植後は、体調がよくなり、透析による時間的な拘束もなくなるので、就労状況は改善し、ほぼ健康人と同等になります。透析をしているときと比べると稼働日数あるいは一日労働時間も増加します。従って、収入も増えることが期待されます。
障害者手帳はなくなりますか?
移植以前に取得していた障害者手帳(1級あるいは3級)は移植後も継続して使用できます。腎移植手術後の免疫抑制療法を行っている状態は1級に認定されます。
障害年金は支給されますか?
腎移植後すぐに支給停止とはなりません。しかし、移植後、順調な人の場合には、現況届診断書を2度目に提出したところで、支給停止になる場合があります。移植後、順調な人の約1/3は障害者年金が停止されています。
移植後の治療費はどうなりますか?
- 特定疾病療養受領証は腎移植後は原則として使用できません。
- 医療証(障害者1級の人に都道府県が発行する)は居住する都道府県のみで使用できます。医療証を持っている人は住民票のある都道府県で移植を受け、移植後も診察を受けるのであれば、自己負担はありません。
居住地以外の都道府県で移植を受けたあるいは診察を受けた場合、高額医療費までは支払う必要があります。ただし、病院の領収書と医療証を居住地の役所に提出すれば、還付が受けられ、結局自己負担はなくなります。 - 1、2以外の人は自分の保険を使用します。高額医療の手続きをすれば、3ヶ月くらい遅れて、返金はされますが、収入に応じて返金額は異なります。
- 身体障害者手帳は持っているが、1級ではない人は役所に申請して更生医療証を取得すれば、更生医療適応病院、薬局(更生医療を指定された病院、薬局)で使用でき、前年の所得税によって、支払う上限が決まっています(自立支援医療)。詳細については各自治体の障害者助成制度窓口、移植施設ソーシャルワーカー等にお問い合わせください。