腎移植Q&A

腎臓をあげることができるのはどんな人ですか

ドナーって何ですか?

腎臓を提供する人をドナーと呼びます。一方、移植される人をレシピエントと呼びます。生体腎移植のドナーは原則として腎不全患者さんの親族に限ります。献腎移植では心停止の方や脳死者からの腎提供が行われます。献腎移植のレシピエントは予め臓器移植ネットワークに登録している腎不全患者さんです。

親族とは誰を指しますか?

日本移植学会倫理指針にて親族とは6親等内の血族、3親等内の姻族と定めています。これは民法上の親族の定義とほぼ同じです。

臓器売買が問題になっていますが、どの様な対策を行っていますか?

最近、本邦でも臓器売買問題が発覚しました。この様なことを未然に防ぐために、ドナーの「本人確認」および「自発的意思の確認」を行っています。本人確認は同一世帯では保険証、別世帯では「顔写真付き公的証明書(運転免許証、パスポートなど)」により確認します。自発的意思確認は家族以外の第三者(倫理委員会が指名する精神科医などの者)により確認しています。臓器売買が疑われる場合は即座に提供プロセスを中止されます。

親族なら誰でも腎臓をあげることができるのですか?

健康な方ならまず問題はありません。医学的には腎臓と一緒にレシピエントに持ち込む可能性のある感染症、悪性腫瘍がないこと、腎機能が良好であることが必要です。以前は組織適合性が問題になっていました。例えば、HLA抗原や血液型のちがいです。しかし、最近では免疫抑制剤の進歩のおかげで重視されていません。実際にHLAがあまり合っていない夫婦間腎移植や血液型がちがう腎移植の例が最近増加しています。

腎提供して腎臓が残り一つになっても大丈夫ですか?

大丈夫な方だけが腎臓を提供することができるのです。若い健康な腎臓は二個で5人をまかなうくらいのパワーがあります。ですから、一個になっても、まだまだ余力がある訳です。腎臓がパワー十分かどうかは移植前の検査で正確に解ります。

腎臓を提供するにはどんな検査を行うのですか?

血を採ったり、レントゲンや超音波検査を行います。検査の目的は提供者の腎臓に十分な余力があるかのチェックや、癌や感染症など移植された人に持ち込む病気がないかを調べるためです。多くの場合は数回の通院ですみます。

腎提供するのに費用はかかりますか?

レシピエントの保険を使いますので、費用に関する心配は不要です。詳しくは最寄りの移植施設でお尋ねください。

腎提供するのに年齢の制限はありますか?

20歳以上70歳未満が望ましい年齢です。生体腎の提供者としての未成年は社会的理由(判断力に疑問)から不都合とされ、70歳以上では腎機能の精密検査が必要です。

生体腎の提供者はどんな病気を持っているとダメですか?

癌を治療して日の浅い方や、全身性の細菌感染症あるいはウイルス感染症の方は、このような病気を腎臓と一緒に持ち込んでしまう恐れがあるので、治るまでは提供できません。

生体腎の提供者はどのような手術を受けるのでしょうか?

脇腹を約20cm切って片側の腎臓を取り出す開腹手術と小さな傷からカメラと専用器具を用いて腎臓を取り出す鏡視下手術があります。最近、鏡視下手術が行われる場合が増えています。開腹手術と比較して傷が小さいので、術後の痛みも少なく、開腹が早いという利点があります。また、美容の面でも優れています。早期退院が可能であり、早期社会復帰が期待できます。どちらの方法でも全身麻酔で、出血量もわずかです。手術の翌日から食事可能となり、次の日から歩行が可能となります。傷が治るまでは約1週間で、それから2~3日で退院されるのが通常の経過です。

夫婦間での腎移植はできるようになったのですか?

可能です。以前は親子や兄弟のように組織適合性の良い組み合わせで移植が行われていました。しかし、最近では免疫抑制剤の進歩で夫婦間でもうまくいくようになり、その成績は親子間、兄弟間と比較して遜色ありません。夫婦一緒に旅行や趣味を楽しみたいなどの理由で移植を考えるご夫婦が増えているようです。実際に2010年に我が国で行った生体腎移植例のうち夫婦間腎移植は37%を占めています。ただし妻がレシピエントの場合、抗体による拒絶反応がおこる場合があるので、移植前に十分チェックすることが必要です。

血液型がちがうと提供できないのですか?

血液型がちがっても移植はできます。図1は血液型不一致の腎移植であり、特別な処置は不要で血液型が合った場合と同じように腎移植できます。図2は血液型不適合の腎移植であり、血液型のちがいに関する抗体が問題になる組み合わせです。この場合、抗体を除去するなど特殊な処置が必要です。

図1.血液型不一致移植
図1.血液型不一致移植

図2.血液型不適合移植
図2.血液型不適合移植

血液型不適合腎移植で必要な特殊な処理とは何ですか?

手術の前に血液型のちがいに関する抗体を取り除くために血漿交換などを行う必要があります。また、抗体を作る臓器である脾臓をとります。最近、まだ、保険適応にはなっていませんが脾臓をとるかわりにリツキシマブ(抗体を作るのに関係する細胞を減らす薬)を投与する方法があります。倫理委員会の承認のもと、脾臓摘出を回避し、リツキシマブを投与する方法をとっている移植施設が最近増えてきています。

抗ドナー抗体ってなんですか?

拒絶反応をおこす特別なたんぱく質のことです。まれにレシピエントがあらかじめそのようなたんぱく質を持っていることがあり、これを抗ドナー抗体と呼んでいます。クロスマッチ(血液交叉反応)試験はこの抗体の有無を調べています。

抗ドナー抗体があると提供できないのですか?

そのドナーから腎臓の提供を受けると、強い拒絶反応をおこすことが予想されます。しかし、抗体の種類や量によっては移植ができる場合もあります。ただし多くは血液型不適合のような特殊な処置が必要です。処置については「血液型不適合腎移植で必要な特殊な処置とは何ですか?」をご覧ください。

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